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第11回黒帯の稽古会

 昨日、第11回黒帯の稽古会が豊橋であった。今回のテーマは「形における気の流れ」。午前中初級編、午後上級編である。いつもは説明して、全員で稽古して、全員が「できた!」と思って帰れるようにしているのだが、今回はすぐにできないことは分かっていたので、達成感を少し犠牲にして、説明と見取りの時間を多くした。そういう意味でいつもとは少し違った稽古会だった。
 午後は、演武会で演武する者を教材にして解説指導を行った。先週の制引鎮特別講習会から始めた新しいOSでの形である。混乱しながらも全員、新しいOSで動きつつある。このままうまく稽古を続けると新しいOSがうまく機能するようになるだろう。
 とりわけ絵実子館長の制引鎮と裕子さんの十三手はかなりよい。絵実子館長は少し前から既に変化していたし、裕子さんは今回、劇的に変化した。
 大懸館長のサイもだいぶ掴みかけており、今までとは全く違うものになりつつある。豊川君が言っていた「瑞々しい躍動感(ぴちぴち感)」がでてくれば更によくなるだろう。いろいろなことを吹っ切って、今、この場で、この体がサイを振っていることの喜びが体の奥から湧きだしてくるといいと思う。
 鶴岡君は今回、初の独演でとても張り切っている。OSの入れ替えで一番混乱しているが、ここ2,3年伸び悩んでいたので、今回を契機に飛躍してくれることを期待している。大懸館長同様、少し掴みかけてきているので、楽しみだ。
 もう一人、一番苦労しているのが央さんだった。制引鎮は全国大会でも優勝した彼女の得意形だが、何しろ今回は、彼女が武道部に入った頃、その全国大会で何度も優勝を分け合っていた絵実子館長と裕子さんという、憧れの二人との共演なのである。
 しかも先週は絵実子館長のキツーイ教育的プレッシャーの洗礼を受けた。みんなで制引鎮をやったあと感想を求められて、絵実子館長が「この中では知里さんが一番うまい」と言ったのである。その場にいたほとんどの者は、その感想を額面通りに受け取ったが、本当は央さんに、「このままでは一緒に制引鎮できないよ。もっと上達しなさい」というメッセージを送ったのである。さすがに央さんは、そのメッセージをきちんと受け取った。だがエライのはその後である。落ち込んだり卑屈になったりしないで、その後すぐに絵美子館長に教えてもらいに行ったのである。絵実子館長も熱心に指導していた。たぶん嬉しかったと思う。
 私はそういう絵実子館長の厳しい優しさと、央さんの素直な心構えをとても尊敬している。どちらも私にはとても真似できない。
 さて、その央さんは、今回の稽古会で、大切なことを思い出し、新しく掴み直して帰ってくれた。もう大丈夫である。

 始めに書いたように、今回は、充実感を少し犠牲にしたのであるが、それでも懇親会での感想会(黒帯の稽古会では、懇親会も稽古である)や、帰宅報告メールなどによると、全員楽しく稽古をして、元気になって帰ってくれたみたいなので、安心した。今回初参加の豊川君も、とても喜んで帰ってくれたようだ。黒帯の稽古会は、来て良かった、稽古できて幸せだ、生きててよかった、と感じられるものにしたいと思っている。それを今回、感じ取ってくれたようである。それにしても豊川君が書いたスケッチにはびっくり仰天した(それについては内緒です)。

 今回は、試験勉強中にもかかわらず四国から西野君が来てくれた。それ以外にも、九州、大阪、三重、名古屋、愛知県各所から参加してくれた。みんな武道が好きで、黒帯の稽古会が好きで、とても生き生きと稽古できた。そして稽古後は、またそれぞれの日常に戻っていった。
 そんな素晴らしい仲間と稽古できて、とても幸せな一日だった。

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