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同じことを繰り返す感性

 先日、稽古における「同じことの繰り返し」について書いた(稽古の心構え)が、そのすぐ後に出た「秘伝」9月号で、同じことが話題になっていた。
 こういうことがよくある。まあ他の人でも言えることしか私が言っていないということかもしれないが、それはともかく、「秘伝」の、内田樹さんと成瀬雅春さんの対談である。もちろん内容はよく似ていても、言い方は違う。言い方が違えば、伝わる道筋と力が違う。そして結局、内容も違うということになるのである。でもこの部分だけでいうと、細かいことを抜きにすれば大体同じことを言っていると考えていいと思う。

(成瀬)……ちゃんと技として生かすためには、同じことを何百回、何千回、何万回やって、徐々に徐々に身体が一つのルートを覚えていくわけですね。……それは当然やらなきゃいけないことなんだけど、一方で、同じ動作を「今日僕は百回やりました」っていう人と、同じ動作を百回やりつつも、そのなかで違うルートを探って百回やった人との違いが凄くある。
(内田)そうですね。それは僕もよく稽古のときに言うんです。一回ずつの技はどれも自分の身体を使った実験なんだから、必ずテーマを持ってやってくださいって。仮説を立てて、ある仮説で動いた場合には何が起こるのかをチェックしなさいって。……でも実験精神のない人は同じことをやるんですよね。同じことをやるのは鍛錬の稽古で、筋肉は付くけど、運動の質は変わらない。

(成瀬)同じことを百回やっているなかでも、感性のある人は実は同じでないことに気が付く。この差は大きい。実は全く同じことって二度とできない。本人は全く同じことをやっているつもりでも、少しずつどこか違う。その「どこか違う」っていうのをどの位見つけられるかということですよ。
 成瀬さんは逆から言っているし、内田さんも私とは多少内実が違うが、でもまあだいたいこんなことを、私は自問自答(自感自答)と言っているのである。

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