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ようやく会えた

  • 2009-09-28 (月) 23:26
  • 研究

 九州大学中央図書館へ。
 院生の頃から存在を知っていて、コピーも持っている本と初めてのご対面。ようやく会えた。

しばらく感慨にふける。
そっと開いてみた。
思ったよりきれいな本だった。
何とも言えず懐かしい。

 長年恋い焦がれたこの本、名を『俳諧十論弁秘抄』という。支考『俳諧十論』の注釈書である。
私の知る限り、『俳諧十論』研究はもちろん、支考研究に使われたことがない。私も使わなかった。だが私の知る限り『俳諧十論』を最も深くかつ正確に理解している注釈書なのである。当たり前だ。実はこの本の内容は、「十論講」、つまり支考自身による『俳諧十論』講義の講義メモ、又は支考の講義ノートを元に書かれた講義録なのである。もちろん本文は支考自身ではなく弟子筋によるもの(の写し)である。

 私の初めての学会発表は、それまで誰も注目しなかった「先後」という言葉に注目し、それを解読したものであるが、この本はその「先後」という語も取り上げて注釈している。当時はこの本のことがよく分からなかったので、「なかなかいい注釈書じゃないか」程度に思っただけで、その発表でもうまく使えなかった。
 それ以降もこの本を使わなかった。というよりきちんと読まなかった。この本は支考の考えを実によく伝えるものであるが、それ故に、そのまま使っても当時の学会では受け入れられないと考えたからである。それほど支考の思想(俳諧観)は誤解され、受け入れられていなかったのであるが、しかし要するに私にはこの本を有効に使う力がなかったのである。

 それでずっとそのままになっていた。しかし、この本の意味付けを行うのは、私の役割であり責任なのだということだけは思い続けてきた。そこで少し前から、ある方と一緒にこの本を通読し、最近読み終えた。そして今回、意を決して会いに行ったのである。
 ちゃんと読んでから会いたかった。
 図書館の方にもとても親切にして頂きました。
 調査の後、佐賀へ移動。もう何回めになるかなあ、と思いながらいつものお店で夕食をとった。いつもながらとても美味しくいただきました。

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