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罰金制度を設けたら文化が崩壊した

  • 2012-05-31 (木) 10:41
  • essay

28日のスーパープレゼンテーション(Eテレ)の一つ、
クレイ・シャーキー「”知力の余剰”が世界を変える」Clay Shirky: How cognitive surplus will change the worldで紹介された保育園のお迎え遅刻の話がとても面白かった。

ニージーとルスティチーニの論文にあるグラフとして紹介された「抑止論」の検証結果である。

イスラエルの10の保育園の「お迎え時間」の親の遅刻。1保育園あたり週に6~10人が遅刻していた。そこで、10分以上遅れたら10シェケルの罰金を与えることにした。するとすぐに変化が現れた。導入から4週間、遅刻は増え続け当初の3倍に達し、その後は2倍と3倍の間を上下したという。この結果は、単純に「違反行為を抑止するには罰を与えればいい」とは言えないということを示しているが、この現象についてClay Shirkyはこう述べている。

罰金制度を設けたことで、保育園の文化が崩壊したのです。

「お金で解決できる問題だ、という空気になってしまった」と。「20世紀における人間行動の研究によると、我々は皆、合理的かつ自己中心的なのだ」そうだが、しかし「罰金がなかった頃、決してやりたい放題ではなかった」。

そしてさらに恐ろしいことに、実験が終わり、罰金制度撤廃後も状況は変わらなかったのである。

一度崩壊した文化は元には戻らなかった。

金銭的動機と内因性動機は相性が悪く、不一致が生じると修復には時間がかかるのです。

犯罪行為を抑止するのは、警備員や管理人ではなく、そこに住む多くの普通の人々の公共意識の目である、と指摘したのはジェイコブズである。そしてその中で育った子どもは、大人になったとき、自らもその役割を果たすようになると。これが文化である。この本質は、ジェイコブス風に言うと「罰則がなくてもそれをやるという公共的な責任」である。私たちはもう少し、人間のもつ「公共的な責任」というものを信てよいのではないだろうか。

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