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2012-05

罰金制度を設けたら文化が崩壊した

28日のスーパープレゼンテーション(Eテレ)の一つ、
クレイ・シャーキー「”知力の余剰”が世界を変える」Clay Shirky: How cognitive surplus will change the worldで紹介された保育園のお迎え遅刻の話がとても面白かった。

ニージーとルスティチーニの論文にあるグラフとして紹介された「抑止論」の検証結果である。

イスラエルの10の保育園の「お迎え時間」の親の遅刻。1保育園あたり週に6~10人が遅刻していた。そこで、10分以上遅れたら10シェケルの罰金を与えることにした。するとすぐに変化が現れた。導入から4週間、遅刻は増え続け当初の3倍に達し、その後は2倍と3倍の間を上下したという。この結果は、単純に「違反行為を抑止するには罰を与えればいい」とは言えないということを示しているが、この現象についてClay Shirkyはこう述べている。

罰金制度を設けたことで、保育園の文化が崩壊したのです。

「お金で解決できる問題だ、という空気になってしまった」と。「20世紀における人間行動の研究によると、我々は皆、合理的かつ自己中心的なのだ」そうだが、しかし「罰金がなかった頃、決してやりたい放題ではなかった」。

そしてさらに恐ろしいことに、実験が終わり、罰金制度撤廃後も状況は変わらなかったのである。

一度崩壊した文化は元には戻らなかった。

金銭的動機と内因性動機は相性が悪く、不一致が生じると修復には時間がかかるのです。

犯罪行為を抑止するのは、警備員や管理人ではなく、そこに住む多くの普通の人々の公共意識の目である、と指摘したのはジェイコブズである。そしてその中で育った子どもは、大人になったとき、自らもその役割を果たすようになると。これが文化である。この本質は、ジェイコブス風に言うと「罰則がなくてもそれをやるという公共的な責任」である。私たちはもう少し、人間のもつ「公共的な責任」というものを信てよいのではないだろうか。

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第8回演武会にむけて

第8回武道部演武会が、7月15日(日)に開催される。
現在武道部では、それにむけて、プログラムの検討や稽古が行われている。
いよいよ6月2日(土)はリハーサルである。

これまでと違うのは、私がほとんどタッチしていないということである。稽古にもフルには参加していない。実行委員長を中心に、学生たちが自分たちで考えてやっている。もちろん演武の指導は行うが、運営に関しては完全に学生だけでやっているし、演目も自分たちで決めたものである。

演武のひとつひとつを最終的に仕上げるのは、私と絵実子さんの責任である。学生たちがそこまで頑張ってくれたものについて、最大限の力を引き出したいと思っている。

演武会は私の夢である。
そして、演武会を学生だけでやってくれるのが私の夢である。

今年はその夢が叶いそうで、嬉しい。

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国文学1の授業、これでいいのだ

今年の国文学1の授業にちょっと異変が起こっている。
例年、本を読むのが大好きな学生が2~3名はいるものの、それ以外の学生はこの授業を機会に本を読んでみようという学生であった。ところが今年は、異常な本好きがほとんどなのである。しかもディスカッション中、ほとんどの学生が積極的に議論に加わる。とても明るいディスカッションが展開されている。

どうなってんの??

本をほとんど読まない学生や、コミュニケーションが苦手な学生はどこに行ってしまったのだろうか?

しかもその日の本をきっかけに、私がどんどん脱線していっても、誰も文句を言わず、乗ってくれる。だからさらに話が膨らんでゆくのである。もはや国文学の授業でなくなってしまっている感がある。この前も、一見その日の本の内容にほとんど触れずに終わってしまった。しかし確実にその本の内容の核心から膨らんでいった議論が展開された。私としては理想的な授業なのであるが、みんなもそれを楽しんでくれているようだ。昨年までだと、「授業に関係のない話が長すぎる」とアンケートに書かれそうなものだが、今年はどうだろう?別にどうでもいいので、毎回ノリノリで私は話し続けているのである。

次回からはそれぞれが自分のお気に入りの本を紹介するので、濃厚な議論が展開されることだろう。彼らについていけるだろうか。わたくし……。

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竹田青嗣の吉本隆明追悼文

3月16日に吉本隆明さんが亡くなったとき、ひとことだけブログに書いた。

それ以来、私の中で感覚をしばらく寝かせていたのだが、ほぼ2ヶ月半が過ぎて、竹田青嗣師匠の追悼文「正しさから見放される体験」(『群像』2012年5月)を読んだ。

心震えた。
自分の個人的な吉本体験、吉本思想の核心、吉本の思想史的位置づけ、吉本思想の現代的意義。僅か2頁の中に、追悼文に必要なものが全部、静かに深く、かつ正確におかれている。そして、そのことによって「吉本隆明とは何であったのか」が鮮明に描かれている。

文章を読んでこれほど感動したのは久しぶりである。吉本さんの追悼文は数多く書かれている。「最高の追悼文」は、それぞれの吉本観によっていくつもあるだろう。しかし、今、これほどの追悼文を書けるものかきを、私は他に知らない。敢えていえば、性質は全く異なるが、加藤典洋さんくらいだろう。加藤さんのはまだ読んでいない。加藤さんのと橋爪大三郎さんのは、これからゆるりと読みたい。

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お墓参り

久しぶりに父親のお墓参りに行った。

途中泰斗武館により、こちらも久しぶりにちょっと稽古に参加した。
小野くんもいて楽しく稽古できた。

墓参り。
私には、失ってはじめて、自分にとってそれがかけがえのないものだったことに気づいたことがたくさんある。私は馬鹿だから失わないと気づかなかったのである。

果たして私は学習したのだろうか。

今でもまだ、ほんとうに大切なものを粗末に考えているのではないだろうか。

失う前に気づきたい。

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うさぎとかめ

豊郷小学校旧校舎群ネタの連続です。

シンボルのうさぎとかめ。
ステッカーを研究室の扉に貼りました。

なかなかいい感じです。

この扉の向こうは、「まなびや」です。
一緒に学ばんと思われる方は、いつでもお越し下さい。
お待ちしております。

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豊郷小学校旧校舎群ガイドブック・ガイドビデオ

先日豊郷小学校旧校舎群に行ったときに買ってきたガイドブックとガイドビデオ。ビデオの方は事前にネットで購入済みだったが、なぜかもう一枚買ってしまった。

まずガイドブック。
豊郷町製作である。

300円以上寄付すると頂ける。
これがとても美しく仕上がっている。
見ているだけで幸せ気分になってくるのである。

そしてガイドビデオ。
こちらは豊郷町ではなく、豊郷小学校旧校舎群記録集製作委員会製作

こちらも見ているだけで心が温まってくる。

が、一つ気になることが…。

それはナレーションの声。
DVDケースの裏を見ると、

アップで。

米澤円さん?
調べてみると、なんと「けいおん」の平沢憂役の声優さんではないか。

まさか平沢憂も知らんと「けいおん」の聖地の紹介ビデオ買ったんじゃないだろなぁ???
って、それ!どぉ~なんやぁ~~~。

って、すいません。勝手に使って。
この方はここのご主人?です。
http://www.jw-site.com/blog/index.html

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講演・箕浦輝幸氏「グローバル経済競争下での日本のものづくりと人材育成」

第18弾プレステージレクチャーズ
テーラーメード・バトンゾーン教育プログラム

グローバル経済競争下での日本のものづくりと人材育成』
講 師:箕浦輝幸氏(トヨタ紡織株式会社 代表取締役会長、
           元 トヨタ自動車株式会社 専務取締役、
           元 ダイハツ工業株式会社 代表取締役社長)
日 時: 平成24年5月24日(木)14:40~16:10
場 所: 豊橋技術科学大学 講義棟 A-101
【講師コメント】
世界経済を索引してきた先進国で、大量生産・大量消費を基本とする経済モデルの限界が見え始め、逆に新興国が先進国を追い上げて来るというグローバル経済戦争時代に突入した。日本の産業は6重苦と言われる大きな課題を抱え、空洞化という大きな問題を抱えてしまった。「Japan as No1」といわれた経済大国がその地位をおびやかされつつある。こういう状況下においては、従来の延長線上でのものづくり戦略では、戦いに負ける。我々は国全体が一体となって改革(イノベーション)するという覚悟がなくてはならない。 本講演では、それを乗り越えるための企業自体が追及しなければならない基本的な生産戦略についてお話したい。又それを進めるためにどんな人材が必要か、どう育てればいいのかも少しふれてみたい。

--------------
グローバル化、イノベーション、「待ったなし」の日本をとことん強調された講演だった。とにかく強調されたのは、

もう既に時代は変わった。
もう既に環境は変わった。
全部を変えなければならない。

ということだった。

しかし、日本が豊かであるためには経済成長し続けねばならず、そのためには製造業が発展しなければならない、と話されたので、その点だけは変わらないのだろう。しかしその枠組み自体も問う必要があるだろうと思う。

この世代のトヨタの方は、大野さんを心から尊敬しておられる。そのことが今回もとてもよく伝わってきた。これだけ人の人生に深く入り込んだ大野さんは、ものすごい方だったのだろう。ぜひお会いしたかった方の1人である。

もう一つ話を聞いていて感じたのは、箕浦氏が、日本の技術者は無理難題を与えられても最終的には何とかする、と心から信じておられるということである。これも今の大企業のトップの方の世代にある程度共通する信念なのだと思う。そうやって日本のものづくりは、いいものを作ってきたという体験を持っておられるのである。
これに関して悲観的な意見が学生自身から出されたが、私自身は、箕浦氏同様、若い技術者の潜在力を信じたい。

講演の最後に、夢を持って頑張れという励ましの言葉とともに、次のメッセージが送られた。

やりきる力を持て
修羅場を買って出ろ
火中の栗を拾う人間になれ

〈グローバル=イノベーション=待ったなし〉に関しては私は別の考えを持つ者であるが、最後の3点に関しては同感である。

別の考えというのは、そもそもグローバル人材というのがよく分からないのであるが、さらに、グローバル人材教育とか、イノベーション人材教育ということを私は信じることができないのである。誤解のないように申し添えておきたいが、グローバル人材やイノベーティブな人自体を否定している訳ではない。そういう人は多勢おられるだろう。ただ、それを一極集中的に目指した教育の、全体的な成果を信じられないというだけである。

ちょうど、個性重視、「個性を出せ、個性を出せ」といって育てられてきた今の学生世代の多くが、「自分には個性がないのではないか症候群」になっているように、「グローバル人材になれ、イノベーションを起こせ」と言い続けられて育てられた多くの人は、「自分にはイノベーションを起こせないのではないか症候群」に陥ってしまうように思えて仕方がない。このような教育は、デメリットがあまりにも大きすぎる。

グローバルとかイノベーションを目標にせず、結果としてグローバルな人材やイノベーティブな人を生み出す教育を考えるべきである。何も難しいことはない。かつての日本にはそういう教育があったのである。そのまま現代に適応しろとは言わないが、学ぶべき点は多いはずである。

これも誤解のないように付け加えておきたいが、箕浦氏は、そのような成果の一局集中教育を主張された訳ではない。箕浦氏は、人材育成のためには、修羅場を経験させよ、と話された。その修羅場で自分で徹底的に考えさせろ、と。これも大野イズムなのだそうだ。

This is〈グローバル=イノベーション=待ったなし〉のような講演を聞いて、部屋に戻ったら、加藤典洋さんと内田樹さんの対談(「週刊現代」2012年5月19日号の記事)がネットにアップされていた。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32550

加藤さんが、いきなり、「今の日本社会を一言で言うと、「浮き足立ち社会」になるでしょう。」と言う。「たとえば原発の再稼働。原発全停止が実現すると「夏に電気が足りなくなるぞ」とまずタイムリミットを置き、人を急き立て、浮き足立つ形で国論を二分する大問題が提起されています。これが最近の特徴ですよね。」と。

内田さんも、「「待ったなし」という誰が決めたかわからないタイムリミットだけあって、「もう時間がない、残された選択肢はこれしかない」と迫る。時間がないことを言い訳にして、考える義務を自己免責している。」と受けている。

今日は、両極の話が聞けた日である(一方は読んだんだけど)。どちらも個々には共感する点も多かった。しかし核心について言えば、加藤・内田両氏の「タイムリミット症候群」の話の方が、少なくとも私の身体にはよいように思われた。

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豊郷小学校旧校舎群、ヴォーリズさんの設計室展2

20日の話題。
記事としては昨日の続き。

豊郷小学校旧校舎群、と旧八幡郵便局で開催されているヴォーリズさんの設計室展にゆく。

さて、豊郷小学校旧校舎群を後にして一路旧八幡郵便局へ。
と思ったのだが、少々お腹がへってきたので、日牟禮ヴィレッジへ。
もちろんクラブハリエ。


昼食がわりのケーキ

さすがにとても込んでいた。

ようやく旧八幡郵便局に到着。


やはりモノクロ


斜めから


反対側から

展示は二階。


ちょっとポーズ

展示を見た後は再び日牟禮ヴィレッジへ。
こんどはたねやさん(「クラブハリエさん」は変な感じがしたので「クラブハリエ」と書いたけど、「たねやさん」は「たねや」ではなんか嫌なので「さん」をつけた。面白いなぁ)。


梅ゼリー

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豊郷小学校旧校舎群、ヴォーリズさんの設計室展1

20日の話題。

豊郷小学校旧校舎群、と旧八幡郵便局で開催されているヴォーリズさんの設計室展にゆく。

まずは豊郷小学校旧校舎群に到着。
着いてびっくり。
ここはアニメの聖地だったのだ。

そういえばヴォーリズ記念館の方が前にそうおっしゃっていたような気が…。
コスプレの方がたくさんおられました。
けいおんカフェなるものもありました。


正面から


噴水

中に入る。
やはり階段に目がいく。
わたしはヴォーリズの階段が大好きだ。


うさぎとかめ

ヴォーリズ建築はモノクロがよく似合う。

長い廊下も魅力的だ。

酬徳記念館の階段はこんな感じ。こっちはまるくない。

講堂の二階からはこんな感じ。

こんな校舎で学べた生徒はとても幸せだったに違いない。

次は旧八幡郵便局へ。
これについては明日書きます。

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