ホーム > 武道部 > 与えられた条件の中で

与えられた条件の中で

 新入生勧誘活動計画の報告に幹部がやってきた。具体的なことについては部長に任せてあるので、僕は新歓活動の武道的な意味について話をしただけだが、話の流れで、最後に

 具体的なことは、みんなでいろいろ工夫してやって下さい

 と言ったら、広報担当副部長がビラについて、

 工夫しようにも、スペースがありません
と言った。ちょっと驚いて、

 これ以上できないところまでやってみたのか?

すると、

 いや、まだそこまでやってません

と笑って言う。
 武道部では、リーダーは仕事を抱え込まず、部員に振ることになっている。リーダーは全体の調整とスケジュール管理をやらなければならないからだ。もちろんその話は何度もしてあるので、自分も、自分以外の部員もできずに、どうしようもなくて困っているのかと思ったら、どうもそうではないらしい。
 昨年のビラも、担当の部員がギリギリまで努力し、その上で卒業生がアドバイスをして作った。そのことは第1回研修会でも詳しく説明してあるので、彼も知っているのだが、その段階までもまだやっていないと言う。要するに、ちょこっと自分でやってみた程度なのであった。

 やる前から言い訳をしたり、状況のせいにする人に未来はない。そういう人は、失敗したとき必ず自分以外のせいにする。スペースが小さ過ぎた、時間が足りなかった、人手が足りなかった、忙しかった、体調が悪かったなどなど。
 このような発想は、武道から最も遠い。

 与えられた状況の中で発揮できた力だけが自分の力の全てである

というのが武道の覚悟だからである。足場が悪かった、体調が悪かった、いきなり襲われた、酒を飲んでいた、手を怪我していた等々の言い訳には何の意味もない。もうちょっと背が高かったら、目がよかったら、足が上がったら、と無い物ねだりをするのも同じである。

 だが、幸い彼は、

 もうちょっと頑張ってみます

と言った。もうちょっと頑張る人には希望がある。これまでの彼の稽古には、上の話に象徴される彼の生き方が出ていた。だから上記のような話をした。そして最後にこう付け加えた。
 「ついついそう考えてしまう」「ついそうやってしまう」「自分の性格ではそういうことは無理だ」などというのは、性格ではなく技術の問題である。「自分を変える」というのは、性格の問題ではなく、武道の技術の話なのである。

 さてさて、どんなビラが出てくるか楽しみだ。

ホーム > 武道部 > 与えられた条件の中で

カレンダー
« 2025 年 1月 »
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
最近の投稿
最近のコメント
カテゴリー
アーカイブ
リンク
中森康之研究室
武道部
俳文学会
現象学研究会

ページトップに戻る