『必携 古典籍・古文書料紙事典』(2011年7月 八木書店)の刊行を記念して、著者である宍倉佐敏氏の記念講演会が開催されたので参加した。
演 題:「文字を記し、古くから伝わる和紙」
講演者: 宍倉佐敏氏(繊維分析研究者/宍倉ペーパー・ラボ)
場 所: 東京堂書店神田神保町本店6階
料紙について全く知識がないので、非常に勉強になった。江戸時代の料紙の特徴、なぜ江戸時代の紙に虫食いが多いのか、使っている紙によって、その人間の地位や教養、経済力が分かるという話、信長・秀吉・家康がどのような紙を使っていたか等々。また、西鶴は話の内容によって料紙を使い分けている、というのも興味深かった。ちょっと考えてみたい内容である。
『奥の細道』についても少しお聞きした。
ところで、本を執筆された動機は後継者問題だという。「おわりに」でもこう述べられている。
以上の調査研究の時に、多くの人々に指摘されたのは後継者問題であった。私の培ってきた製紙技術全般の後継については、育った環境の違い・好みや性質などに加え、時代の変化もあり、現在の日本における利潤追求型の企業や大学では、繊維分析などの基礎研究をする人の養成は難しい。また、私はほぼ独学で植物繊維の研究をはじめたため、後継者の育成法を知らないということも、育たない要因の一つとも思う。(略)後継者が現れることを切に願っている。451頁
職人技が消えかかっているのは、いずこも同じなのである。
最後に本の中で紹介されている素晴らし言葉。
和紙は千年、洋紙百年
和紙の耐久性は極めて高いのである。
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