- 2008-12-18 (木) 19:41
- 読書
発売元: 幻冬舎
価格: ¥ 756
発売日: 2008/11
北島康介選手のコーチ、平井伯昌さんの本である。
非常にまっとうで、それゆえ実行がとても難しいことを平井さんは実践されていることがよく分かる。
オリンピックで世界の頂点に立つことだけが、最終目標では決してない。……水泳を通じてみんなのお手本になる、社会の中でみなさんの役に立っていける人間になってもらいたい。水泳を通じて人間を磨いてもらいたいと思っているのだ。
口でいうのは簡単だが、それを本気で信じて実践するのはとても難しい。本書を読むと平井さんが、日々の指導の中で、実に根気強く水泳と人生の「心構え」を説いていることが分かる。その「心構え」の上に強い心と感性を育ててゆくのである。
伸びていくためには、その選手自身が自分の「感性」をどこまで磨いていけるかどうか、そこがポイントになるといえるだろう。
ある程度の実力がついてくると、こんどはその体を心が支えていかないと伸びていかない。
私たちは、試合、とりわけオリンピックなどの大舞台が選手を育てるとつい考えてしまう。もちろんそれも事実だろう。しかし、選手の強い心を育てるのは実は日々の練習の中にある。
選手は練習の中で試行錯誤を重ねながら、少しずつ成長していく。努力をして、新たな課題を発見し、それを克服することで自信をつけ、精神的な強さも身につける。
小さな失敗と成功の積み重ねが、強い人間を育てていくのである。
そしてその先に何があるか?もちろん世界記録でも金メダルでもない。
集中したその先を突き抜けると、これまでとは全く別の世界が広がっている
のである。
私の知る限り、勝負の世界に生きる超一流の人は、みな平井さんのように「勝ち負けはあくまでも結果である」と言う。
私たちは、もっと遠くを見つめているんだ、
この本には、他にも武道的なところが満載である。しかしその意味についてはまた別の機会に述べたい。
追伸)武道部員、日本文化論Ⅱの受講生は、普段僕が言っていることが具体的なかたちで一杯出てきますので、ぜひ一読を~
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