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身の程を知る

  • 2009-06-18 (木) 19:06
  • 日記

 16日のNHKクローズアップ現代に、樹研工業の松浦社長が出ておられた。樹研工業といえども今回の不況は深刻で、昨年の売り上げはピーク時の2割まで一時落ち込み、今も半分程度にしか回復していない。それにも関わらず、リストラどころか、定期昇給も例年通り行ったという。松浦社長は、

 売り上げ半分でも10年はいいね。さすがに7割減ると3年くらいだな。それでも3年くらい平気だよ。

といって笑っておられた。番組の解説によると、それは逆転の発想によって蓄えた潤沢な自己資金(内部留保)だという。
 好景気でも融資による規模拡大を行わない。逆に不景気になるとそれまで蓄えた自己資金で設備投資を行うなど、攻めの経営に転じる。ライバル企業が借金で商品開発を控える間に差をつけるのだという。

 昨年武道部員と参加した講演会でも、「日本のような成熟市場で、規模拡大を考えるのはみっともない」「日本のような市場では、新技術を開発しなければ生き残れない」「自分たちは技術の質で勝負するのであって、価格競争はしない」というようなことをおっしゃっていた。
 さて、番組ではさらに次のようにおっしゃった。

 身の丈でやりなさい。自分のお金の範囲でやりなさい。

 われわれはアリの生活をしているんだ。
 お金の話に限定しなければ、身の丈でやる、かつアリのようにやる、の両立は、学問においても武道においてもとても重要であり、これほど難しいことはない、と思う。
 本居宣長は『うひ山ぶみ』でこう語っている。

 詮ずるところ学問は、ただ年月長く倦まずおこたらずして、はげみつとむるぞ肝要にて、学びやうは、いかやうにてもよかるべく、さのみかかはるまじきこと也。いかほど学びかたよくても、怠りてつとめざれば功はなし。
 又、人々の才と不才とによりて、其功いたく異なれども、才・不才は生れつきたることなれば、力に及びがたし。されど、大抵は、不才なる人といへども、おこたらずつとめだにすれば、それだけの功は有る物也。(白石良夫全訳注・講談社学術文庫)

 才能の有無は自分の力ではどうしようもないから、そんなことに煩わされても仕方ない。どんなに学び方がよくても怠けていては成果は出ない。逆に才能のない人でも、ただ長年、倦まず怠らず、励み努めさえすれば、その分だけの成果は出るのである。だから、
 ただ自分の身の程を知り、かつ最善を尽くし続けるのみである。
 ほんとうに難しい。……が、
武道については、身の丈でやることがちょっと出来るようになってきたので、これがまたとても楽しいものであることも分かってきた。
 要するに長年やっていて、ようやく身の程を知った、ということですね。

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