- 2011-06-03 (金) 23:09
- 日記
6月2日
このブログでもお知らせしていた渡辺敦雄先生の講演会。
平日の昼間にもかかわらず、学生、市民の方合わせて330人(遠隔配信会場含)の方にお越し頂いた。ご来場頂きました方に、この場を借りまして御礼申し上げます。
講演前にまずはテレビ局のインタビュー
インタビューされた方の腕前にうなった。さすがプロ。渡辺先生も実に的確に答えられた。
そして講演会。
遠隔配信会場には行かず、後ろで立ち見の方も。
実に分かりやすく的確な講演だった。
「危機意識」と「人間力」に関する話をもう少し、という感想も聞かれたが、こちらの話は私も機会を見つけてやりたいと思う。
さて、この講演で渡辺先生は何度も設計のphilosophyという言葉を使われたのが印象的だった。もちろん渡辺先生は、ずっと原発を推進してきたのではなく、新しいエネルギーに夢をもってその世界に入ったところで、多くの問題に気づき、いろいろな人とやりあった挙げ句、数年後にその世界から離れられたのであるが(そのことを夜の食事会で初めて知った)、それでも福島第一原発3号機他の基本設計に関わったものとして、自分たちの設計philosophyが否定されたとき、人間はどのような態度をとることができるのかを、ここで示されたのだと思う。
「この講演が技術者としての再出発になるだろう」と話されていた通りである。
「豊橋で講演している暇があったら、私財をなげうって被災者に償え」という人もいたが、自分が今できるのは、市民には原発事故を現場を知る専門家として分かりやすく解説し、これから現場に出る技術者(学生)には、自分の経験を誤魔化すことなく話し、未来への希望を托すことであるとされた判断を私は是とする。
学生たちはこれから現場で活躍できる技術者をめざして日々研究と勉強をしている。そういう学生に、純粋な学問の話だけではなく、組織や会社の現実の話を含めて、しかしどういう技術者を目指してほしいかを熱く語られた。その思いは多くの学生に伝わったようで、統一書式のアンケートの中に私が無理矢理入れ込んだ、
本講演は、技術者としての現在の自分自身を見つめ直したり、自分が将来なりたい技術者像について考え直すきっかけになりましたか
という質問に、コメントとともに「はい」と答えていた学生が非常に多かった。この講演を契機に、技術者とは何か、自分はどういう技術者を目指すのかをよく考え、志を高く持ち、夢を持ち、真に高度な技術者になってくれる学生が多くいることを心から願っている。そしてそれが現実のものとなることを私は信じて疑わない。
市民の方も非常に熱心で、質疑応答時間は非常に饒舌に自分の思いを語っておられた。翌日事務局にお電話頂いた方もおられたようである。
講演会の後、武道部の学生と卒業生、三崎先生と食事会を開催。講演会では聞けないディープな話を堪能した。
そう、「人間力」養成プロジェクトメンバーの三崎先生と三木先生も強行スケジュールで駆けつけてくれたのである。渡辺先生を含め3人を駅までお迎えにいってくれた絵実子さんが、
あの3人の先生、会った瞬間から、ず~~としゃべり続けてますよ
と楽しそうに私に話した。
いつもやで~ プロジェクトの全体会議は、会った瞬間から別れるまで、3日間くらいず~としゃべりまくってんねん。
と答える。さらに絵実子さんがこう言った。
でもきちんと人の話は聞いた上で、自分の考えを話しておられるから、聞いていてとても面白い。自分もそこに違和感なく入れてくれるし、話していてとても気持ちいい。いいですね~
その通りである。初めて会った人であろうが、どこの誰であろうが、そんなことはどうでもいい。今話題になっていることに、オープンマインドで入ってくる人は歓迎である。自分たちが知りたいこと、語りたいこと、掴みたいことを一緒になってめざす流れに乗る人であれば誰でもいいのである。だからとても楽しいし、得るところ大、なのである。
会ったこともない先生3人を駅までお迎えにいって、後部座席で3人並んで熱く語っている先生方の話に、普通はなかなか入れないものだと思うが、絵実子さんは、助手席から参加したようである。それを自然にさせてしまうものを3人の先生が持っているのであり、絵実子さんも自然とそこに入れるオープンマインドを持っているからである。
いきなり本質的な話をず~とし続けて、凄いですね~
と絵実子さんが三崎先生に言ったら、
あたりまえやん。そのためにきたんやから。直接話を聞ける、こんな貴重な機会はめったにないんやから。自分の疑問も解けるし、学生の指導にも使えるし。
と答えられたようである。その三崎先生は、終電に間に合うように食事会を中座し、タクシーで帰られた。私と小野くん(三崎研究室、ロボコン出身で、現在武道部創部10周年記念演武会実行委員長)がお見送りした。当然のごとく私たちはタクシーが見えなくなるまでお見送りしたのであるが、小野くんが本当に心を込めてお見送りをしているのがひしひしと伝わってきたし、タクシーが見えなくなる直前に、深々と礼をしたのがとても印象的であった。