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2012-01

英語力の高いポーランド

wutan(ウータン)vol.18が届く。

その中に、「読み書き重視でも英語力の高いポーランド その秘密は?」という記事があった。

IELTS試験で上位のポーランドは、小学校から英語は必修。週4回(45分/回)なのだそうだ。その特徴は、「読み方」「綴り方」に主眼が置かれている点だという。英語の本の音読を通じて、読み書きの基礎をしっかり身につけることである。英語力の高い国によく見られるコミュニケーション重視型の指導ではないところがポイントだそうだ。1~3年時に英語の基礎を身に付けさせた後は、実用面にも力を入れるとのこと。

詳しくはwutan(ウータン)vol.18を読んで下さい。Webでも読めます。

興味深いので、もっと詳しい情報がほしいところである。
どなたか詳しい方、ご教示下さい。

ところで、「英語力の高い国」という「英語力」って具体的に何なののだろう?
「コミュニケーション重視型の指導」というから、会話力のことなのだろうか。

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グローバリゼーションと現場の力

「グローバルでイノベーティブ」な技術者で紹介した記事に次のような箇所がある。

————-
フミオ、とにかく彼らと働くのは効率が悪い。指示は曖昧。優先順位は付いていない。後先考えない頻繁な指示の変更に説明はない。社内だけに留まればまだ良いが、外で取引先や得意先からも同様の問題を指摘されるのは、競争が激しい中では死活問題だよ。
————-

アメリカにある現地法人のトップ(日本人)を批判したものである。
後半はともかく、前半の、「指示が曖昧」「頻繁な指示の変更(に説明がない)」という点が興味深かった。この方の具体的なケースはおいておいて、これを一般論として考えるととても面白いのである。

おそらく日本人トップの「曖昧で頻繁に変更される指示」は、昨日今日に始まったことではない。ずっと前からそうだったはずである。
ということは、日本が景気がよくて日本企業が強かった時代からそうだったのである。つまり、「曖昧で頻繁に変更される指示」ばかりであっても、日本企業は大丈夫だったということだ。そして、この「曖昧で頻繁に変更される指示」が原因で日本企業が弱くなったり、日本の景気が悪くなった訳ではないということである。

なぜトップの指示が「曖昧で頻繁に変更される指示」であっても日本企業がうまくいっていたかというと、現場の人たちの能力が極めて高かったからである。曖昧な指示であろうが、急に変更された指示であろうが、即座に完璧に対応できる能力が多くの日本人にあったのである。それが日本の教育の賜物だった。もちろん愚痴や上司の悪口は言っただろうが、それだけである。言われてる上司の方も、若いとき同じようにしてやってきたのだから、それでいいのである。

「曖昧で頻繁に変更される指示」が原因で、会社全体が悪い方向に向かうのは、現場の底力が弱い場合である。現場の力が弱い場合は、明確で細かい指示がなければどうにもならない。現場の一番下の立場の人が、臨機応変に的確な判断と行動ができない(やらせない)ことを前提に、トップが具体的で明確な指示を出す。グローバリゼーションとはそういうことだ。

先日の大学入試センター試験の1日めの朝、たまたま事務の方数人が試験場の点検をされているのを見た。そのとき、大変失礼ながらこの方たちがとても優秀なのに驚いた。何が優秀なのかというと、見る場所が実に的確なのである。例えば施設環境課の方は、入室する際、ドアクローザーをチェックし、入室するなり床、天井、壁等々のチェックをする。天井の空調のフィルタの僅かなズレを見逃さない。別の課の方は、他の場所を見ている。もちろん全体を見ている方もいる。

1日めが終了し、夜にまた点検をされた。

そして2日めの朝、私はまたまた驚いた。廊下のタイルがズレそうなところにきちんとテープが貼ってあったのである。私が1日めの夜そこを通ったのは、点検の後である。そしてそのときはタイルについて全く注意しなかった。ズレていたら気づいただろう。おそらくズレる可能性があった程度だったはずである。担当の事務の方はそれを見逃さなかったのである。しかも点検のときにはテープがなかったのだろう。試験本部が解散された後、彼は1人でそこにやってきてテープを貼ったに違いない。それは受験生が万が一ズレたタイルで滑りでもしたら大変だ、という心遣いであった。

翌朝、これもたまたま、入試課の方がそのテープについて、「○○さん、テープありがとうございました」と言っているのを聞いた。その方も朝点検していて、自分のいなかった夜遅くに何が行われたかに気づいたのである。

さてこの点検、トップからの指示は、「試験場の点検」だけである。チェックリストも何もない。しかし各人が「試験場としてあるべき状態」と「万が一にも起こりうること」を想定してできるだけ手を打っておくのである。その判断は現場の1人1人がやるのである。

そして何よりも大切なのは、もし具体的で明確な指示(チェックリスト)があったら、おそらくあの廊下にテープが貼られることはなかったであろうということなのである。

試験場の点検とグローバル企業の仕事と一体何が違うというのだろうか?

グローバリゼーションというものが、ごく一部の優秀なリーダーの「明確で具体的」な指示通りに現場の人が動くことを求めるのであれば、それは現場の底力など不要であるといっているのと同義である。現場の人は、リーダーの指示をきちんと実行しなさい、ということは、指示されなかったことは実行しなくてもいい、ということだからである。底力とは、まさに不慮の事態に際し、指示されていないことをその場の判断で行える力のことだからである。

底力のある組織のリーダーに必要なのは、高度な専門知識ではなく、「徳」である。そして「徳」のある人は、だいたいにおいて、明確で具体的な指示など出さないものである。ただ問題なのは、「徳」もなければ能力もない人も、明確で具体的な指示を出さないことだ。

それを見分けるのも、徳であり、見識なのである。

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先生の言ってることが分かりません……

国文学Ⅱ。村上春樹『海辺のカフカ』。

二人めのプレゼンが終了し私の話になろうかという、そのとき、一番後ろに座っていた学生が、こう言った。

先生の言ってることが分かりません。

うぎょ!???

村上春樹が言いたいことが分からない。
先生の言ってることも分からない。
「全部言葉にできなくていい」というが、その意味が分からない。

たいたいそんな感じだっただろうか。

小説は、研究論文とは違うので、明確な結論がまずあってそれを読者に伝達するものではない。最初に「結論」があって、その後に「論証」があるものではない、と何度も言ってきた。

では伝えるものがなくて書いているのか?

と問われるので、

そうではなく、伝えたいものはある。しかしそれは書く前に、明確に言語化できないような「何か」である。

と説明する。

一読して読者が分からないのは、作者の責任ではないか。作者にはきちんと説明する義務がある。

と言われるので、

研究論文はそうかも知れないけれども、小説はそうではない。「モヤモヤ」が残ったり、分からなさが残ったりする場合もあるが、その場合は、その意味を考えることが大切である。
小説にはその分からなさの中に、何か大切なことがあると直観させる力が必要である。それがない小説はダメ。
『海辺のカフカ』も論理的にはよく分からないことが沢山ある。そのように書かれている。そして、ここには大切な「何か」が語られていると私は思う。だから私はそれを問うのである。先週の発表者は、それをとても上手く解いてくれた。あんな風にいろいろ考えてみればいいと思う。もちろん最後まで問うた結果、そこにはたいしたものがなかったということも、ありえない訳ではない。だから問うのである。

じゃあ、ひとことで言えば、分からなくていいということですね。

いやいや、それはひとこと過ぎで……

途中からもう一人加わって、三人でだいたいこんなやりとりをした。

聞いていた学生も面白がって聞いていた。たまに発言しながら。

文学好きの人と話しても絶対出てこない疑問などが出て来て面白い。そして鍛えられるのである。

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研究室紹介は呼び込みにあらず

兼務している建築・都市システム学系の3年生に対する研究室紹介があった。私も参加。

兼務教員の研究室は学部生は各学年上限1名と決められているし、研究内容から考えても私のところにくる学生はほとんどいないと思われるのであるが、この研究室紹介は、実は「単なる呼び込み」ではないのである。

この研究室紹介は、原則としては、全教員が全学生(3年生)に現在行っている研究内容を説明するというイベントである。この意味するところは、少なくとも、自分にあまり興味のない領域も含めて、建築・都市システム学の一通りの研究の最前線を理解して下さいね、ということなのである。そして学内再編で私たちが兼務教員になったのは、建築・都市システム学を学ぶ学生に、人文社会の価値観や素養を身に付けて欲しいということであった。だから私が参加して、私が大切だと思うことを伝えることには、大きな意味があるのである。

そしてもう一つ重要なのは、各教員のプレゼンテーションを見てね、ということである。

これから研究室に入ってプレゼンをする機会も増える学生に対して、各教員がプレゼンの見本を見せるのである。僅か5分の間に、自分の研究の何をどのように紹介するのか。そのお手本を示す必要がある。教員は大変である。言い訳はできない。しかし高度なテクニックを駆使する必要はない。上手い下手もどうでもいい。ただこういう場面で、逃げたり誤魔化さずに真正面から向き合える人間かどうかを学生さんは見ている。そして自ずと現れれる各教員のプレゼンの個性から、いろいろ学んでくれるのである。

各教員はそういう思いを持っているはずである。
研究室紹介は単なる「呼び込み」にあらず。
そのイベントで学生に伝えたいことは、他にある。
そうしてそれを受け止め、さらには、私たちが意図しなかったことまでをも受け止めてくれる。
そういう場になれば、このイベントは大成功である。

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落合博満『采配』(ダイヤモンド社)

落合博満『采配』(ダイヤモンド社)を読む。

出た時に買ってあったが、体調不良であまり仕事ができないので、読むことが出来た。

落合さんの本は、多分全部読んでいるはず。

どの本を読んでも、すごくまっとうなことをシンプルに語っておられると思うのであるが、おそらくそれが一番難しいのだろう。

年末にテレビで落合さんの特集をやっていたが、とても面白かった。何がかと言えば、中日の多くの選手が「落合野球は?」と問われ、「普通の野球」と応えていたからだ。私は野球のことをよく知らないが、まっとうな野球だと確信していたので、それを選手が語っているのを見て、嬉しかった。しかし、落合野球が普通の野球だとすれば、それを「オレ流」とよぶ人たちの考えている野球は、一体どういう野球なのだろう?

ところでこの本、ちょっと気になったのは、太字箇所である。私には、太字になっていないところに大切なことが書かれているように思われたのであった。

それにしても、落合さんほどの実績を残された方でも「オレ流」と呼ばれるのだから、私のいうことを学生がなかなか信じてくれなくても仕方ないのかも知れない、と自分を慰めるのであった。

武道部員にはぜひ読んでほしい一冊である。

センター試験疲れ?

昨日のセンター試験二日め終了後、俄に体調が悪化。

実は金曜日からちょっと危ないなと思っていたので、いろいろ工夫して何とか2日間乗り切ったのであるが、やはり終了して気が緩んだのか。

一年で一番長い日2

15日。センター試験2日め。

2日めも特に問題なく終了。
ニュースによると、全国的にも特に大きな混乱はなかったようだ。

しかしニュースを見ていると、一日めの方は、どんどん問題が明らかになってきた。想像以上に混乱があったようだ。
受験生への影響が心配である。

一年で一番長い日1

14・15日は大学入試センター試験。

14日は1日め。
今年は雪も降らず、少し穏やかなセンター試験。
しかしニュースによると、大幅なシステム変更のため、全国の大学で混乱があったようだ。
幸い本学はたいした問題もなく無事1日め終了。

しかし、長い。

工学部ならではのプレゼン

12日。

今日の国文学のプレゼンはバラエティに富んでいた。

1人め。
手書きのプリントでプレゼン。彼女独特の世界を披露してくれた。「人間は正しく生きねばならぬ」という強い意志を感じた。

2人め。
最近減った理系プレゼン。まず前提をおく。そしてその前提に従って、仮説を立てて話を組み立てる。そして結論を導く。久しぶりにこの方式を聞いたような気がする。ただ文学作品でこれをやると結構難しい問題が起こってくる。前提条件そのものの検証が必要だし、解釈が一義的に決められないものもあり、その一義的に決められないことの意味を問うこともまた大切だからである。特に『海辺のカフカ』は難しい。
もちろん彼はそれがわかっていて、あえてこの手法を採用したのだろう。それはそれで面白い。

3人め。
『海辺のカフカ』の多重性、微妙さを見事に言い当てたプレゼンだった。素晴らしい、と思った。曖昧な問題を、その曖昧であることの意味を問うという形で示してくれた。

工学部でこういう作品をやると、ほんとうにバラエティに富んだプレゼンが聞けるのである。学生さんの発表なので、具体的に詳述できないのが残念だ。

話したいという欲望

11日。冬休み明けの授業再開。

今日は日本語法2(C)。
例によって一人ずつ朝の挨拶。

久しぶりなので、みんなよくしゃべった。
素晴らしい。

授業が始まった頃は、無理やり話していた学生もいたが、今日は、みんないろいろ話したいという欲望を持っていた。

話すべきものを持つと、それを話したいという欲望が強くなる。それがまた話すべきものを増やしてゆく。この循環がコミュニケーション能力の基礎力を徐々に高めてゆくのである。

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