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ジェイコブズ『都市の原理』
研究室輪講は今日からジェイコブズ『都市の原理』(鹿島出版会)。原題は”THE ECONOMY OF CITIES”。
この本は、「どうして成長する都市もあれば、沈滞・沈没する都市もあるのか、という私の好奇心から生まれたものである」(2頁)と語り始められ、前著『アメリカ大都市の生と死』からのテーマが引き継がれていることが明言されている。
そして、いきなりジェイコブズ節が炸裂する。
多くの分野ーー経済学、歴史学、人類学ーーで流布している理論は、農村経済を基盤にして都市が成り立っている、として疑わない。もし、私の観察と推論が正しければ、その逆が真実である。2頁
農業優位のこの理論(私の考えではドグマ)が都市についての従来の仮説にあまりに徹底してしみこんでいるため、この章では緊急要件として、この点を扱おうと思う。2頁
一般に信じられている思想が必ずしも真実ではない、ということは、科学史の上でわれわれのよく知っているところである。正しいと信じられていた思想の非真実性が明らかにされて初めて、その思想の及ぼした影響がどんなに広く、見かけ以上に危険なものだったかがわかる、ということも知っている。2頁
その説明のためにジェイコブズは生物学の例をあげ、多くの生物学者が「新しく発見された真実を従来の誤った理論に従わせるような理屈をつくることに汲々としていた」(3頁)と指摘するのである。
そして、
これと同じように、都市と経済発展一般についてのわれわれの理解は、農業優位のドグマによってゆがめられている、と私は考える。このドグマは、偶然発生の理論と同じくらい珍妙で、過去にすがりつくダーウィン以前の思想史の名残である、ということを論じようと思う。3頁
2章「新しい仕事はいかにして生まれるか」でも、ジェイコブズは非常に興味深い分析を行っている。ここで述べられている新しい仕事の発生原理は、現代においてイノベーションを考えるときにもとても重要な視点である。
これからどんな展開になるのかとても楽しみである。
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ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展 in 高槻
大阪医科大学歴史資料館開館5周年記念(本学創立85周年の節目に)「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展 in 高槻」に行く。
木の向こうに建物が…。
正面に…。
階段…。
階段と窓…。
階段と窓…。
窓…。
パネルがほとんどだったが、思ったより充実した展示だった。探していたものも見つかり、私にとってとても収穫が多い展示だった。
とても幸せ…。
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『アメリカ大都市の生と死』読了
ゼミ。
ジェイコブズ『アメリカ大都市の生と死』(山形浩生訳 鹿島出版会 2010年4月)読了。
この本の魅力はいずれまとめて書きたいと思っている。
とても面白かった。
次回からはジェイコブスシリーズ第二弾、『都市の原理』。
楽しみである。
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正しさを論ずるとは
今日の卒研指導。
初めて論文を書く学生のために、基本的な心構えを説く。
「学問に対する敬意をもって、誠実に論文を書こう!」という話をする。特に自分にとって不都合な資料やデータが出て来たとき、誤魔化さずに、それときちんと向き合って、誠実に論文を書こう、と。もちろん逆に、自分にとって都合のいい資料やデータが出てこないときも同じである。捏造なんてもっての他だ。それさえ忘れなければ、それほどおかしなことにはならないはずである。
自分が発見したことも、自分が考えた理論も、それまでの先人の積み重ねがあってはじめて可能となったことであり、決して自分1人で辿り着いた訳ではない。それなのに、そんな当たり前のことを忘れて、知らないうちに手柄争いをして、「自分が、自分が」となるからおかしなことになるのだ。
自分の興味のあるテーマを選び、研究が深まるにつれて、思わぬ発見があったり、いろいろ面白いことが分かってくると同時に、逆に謎も深まる。それが研究の醍醐味である。おそらくこれから研究を始める人も、そういう予感を持っているはずだ。初心忘るべからず。
さらに「正しい」とはどういうことか。「論ずる」とはどういうことか。というお話も少しする。
私たちの論文で扱う「正しさ」は、誰がいつどこで考えても絶対的に正しい(不変)という正しさではない。私たちの研究室で扱っているテーマは、客観的なデータを出せない場合がほとんどである。「定量化できないが大切なもの」に光を当てようとするものだからである。
だから、「正しさ」というのも、その人でなければ言えない「正しさ」のことである。その意味で、「正しさ」の出発点は極めて個人的で主観的なものである。しかしそれは普遍性へと開かれているはずのものでもある。「なるほどその人にそのように言われてみればそのように見える」。そのような正しさである。
「論じる」とは、そのような最初の自分の直観的な「正しさ」を普遍化するために道をつける努力のことである。「誰がそう考えてもそういう道を辿るよね」という道をつけてやることである。それは、読んでくれた人の納得や共感を目指すものであって、決して誰かを論破したり、自分の先見の明や優秀さを示そうとするものではない。
学問は、先人から渡されたバトンを少し前に運んで、次の人に渡そうとする努力の中にある。その努力の中に、自分だけの面白いテーマもあり、研究の醍醐味もあるのである。不誠実なランナーは、先人からのバトンをきちんともらうことができない。先人からのバトンをきちんともらうことができなかったランナーには、研究の醍醐味を味わうことはできないのである。
研究を始めるにあたって、まずはそれを知っておいてほしい。
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講演・箕浦輝幸氏「グローバル経済競争下での日本のものづくりと人材育成」
第18弾プレステージレクチャーズ
テーラーメード・バトンゾーン教育プログラム
グローバル経済競争下での日本のものづくりと人材育成』
講 師:箕浦輝幸氏(トヨタ紡織株式会社 代表取締役会長、
元 トヨタ自動車株式会社 専務取締役、
元 ダイハツ工業株式会社 代表取締役社長)
日 時: 平成24年5月24日(木)14:40~16:10
場 所: 豊橋技術科学大学 講義棟 A-101
【講師コメント】
世界経済を索引してきた先進国で、大量生産・大量消費を基本とする経済モデルの限界が見え始め、逆に新興国が先進国を追い上げて来るというグローバル経済戦争時代に突入した。日本の産業は6重苦と言われる大きな課題を抱え、空洞化という大きな問題を抱えてしまった。「Japan as No1」といわれた経済大国がその地位をおびやかされつつある。こういう状況下においては、従来の延長線上でのものづくり戦略では、戦いに負ける。我々は国全体が一体となって改革(イノベーション)するという覚悟がなくてはならない。 本講演では、それを乗り越えるための企業自体が追及しなければならない基本的な生産戦略についてお話したい。又それを進めるためにどんな人材が必要か、どう育てればいいのかも少しふれてみたい。
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グローバル化、イノベーション、「待ったなし」の日本をとことん強調された講演だった。とにかく強調されたのは、
もう既に時代は変わった。
もう既に環境は変わった。
全部を変えなければならない。
ということだった。
しかし、日本が豊かであるためには経済成長し続けねばならず、そのためには製造業が発展しなければならない、と話されたので、その点だけは変わらないのだろう。しかしその枠組み自体も問う必要があるだろうと思う。
この世代のトヨタの方は、大野さんを心から尊敬しておられる。そのことが今回もとてもよく伝わってきた。これだけ人の人生に深く入り込んだ大野さんは、ものすごい方だったのだろう。ぜひお会いしたかった方の1人である。
もう一つ話を聞いていて感じたのは、箕浦氏が、日本の技術者は無理難題を与えられても最終的には何とかする、と心から信じておられるということである。これも今の大企業のトップの方の世代にある程度共通する信念なのだと思う。そうやって日本のものづくりは、いいものを作ってきたという体験を持っておられるのである。
これに関して悲観的な意見が学生自身から出されたが、私自身は、箕浦氏同様、若い技術者の潜在力を信じたい。
講演の最後に、夢を持って頑張れという励ましの言葉とともに、次のメッセージが送られた。
やりきる力を持て
修羅場を買って出ろ
火中の栗を拾う人間になれ
〈グローバル=イノベーション=待ったなし〉に関しては私は別の考えを持つ者であるが、最後の3点に関しては同感である。
別の考えというのは、そもそもグローバル人材というのがよく分からないのであるが、さらに、グローバル人材教育とか、イノベーション人材教育ということを私は信じることができないのである。誤解のないように申し添えておきたいが、グローバル人材やイノベーティブな人自体を否定している訳ではない。そういう人は多勢おられるだろう。ただ、それを一極集中的に目指した教育の、全体的な成果を信じられないというだけである。
ちょうど、個性重視、「個性を出せ、個性を出せ」といって育てられてきた今の学生世代の多くが、「自分には個性がないのではないか症候群」になっているように、「グローバル人材になれ、イノベーションを起こせ」と言い続けられて育てられた多くの人は、「自分にはイノベーションを起こせないのではないか症候群」に陥ってしまうように思えて仕方がない。このような教育は、デメリットがあまりにも大きすぎる。
グローバルとかイノベーションを目標にせず、結果としてグローバルな人材やイノベーティブな人を生み出す教育を考えるべきである。何も難しいことはない。かつての日本にはそういう教育があったのである。そのまま現代に適応しろとは言わないが、学ぶべき点は多いはずである。
これも誤解のないように付け加えておきたいが、箕浦氏は、そのような成果の一局集中教育を主張された訳ではない。箕浦氏は、人材育成のためには、修羅場を経験させよ、と話された。その修羅場で自分で徹底的に考えさせろ、と。これも大野イズムなのだそうだ。
This is〈グローバル=イノベーション=待ったなし〉のような講演を聞いて、部屋に戻ったら、加藤典洋さんと内田樹さんの対談(「週刊現代」2012年5月19日号の記事)がネットにアップされていた。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32550
加藤さんが、いきなり、「今の日本社会を一言で言うと、「浮き足立ち社会」になるでしょう。」と言う。「たとえば原発の再稼働。原発全停止が実現すると「夏に電気が足りなくなるぞ」とまずタイムリミットを置き、人を急き立て、浮き足立つ形で国論を二分する大問題が提起されています。これが最近の特徴ですよね。」と。
内田さんも、「「待ったなし」という誰が決めたかわからないタイムリミットだけあって、「もう時間がない、残された選択肢はこれしかない」と迫る。時間がないことを言い訳にして、考える義務を自己免責している。」と受けている。
今日は、両極の話が聞けた日である(一方は読んだんだけど)。どちらも個々には共感する点も多かった。しかし核心について言えば、加藤・内田両氏の「タイムリミット症候群」の話の方が、少なくとも私の身体にはよいように思われた。
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豊郷小学校旧校舎群、ヴォーリズさんの設計室展1
20日の話題。
豊郷小学校旧校舎群、と旧八幡郵便局で開催されているヴォーリズさんの設計室展にゆく。
まずは豊郷小学校旧校舎群に到着。
着いてびっくり。
ここはアニメの聖地だったのだ。
そういえばヴォーリズ記念館の方が前にそうおっしゃっていたような気が…。
コスプレの方がたくさんおられました。
けいおんカフェなるものもありました。
正面から
噴水
中に入る。
やはり階段に目がいく。
わたしはヴォーリズの階段が大好きだ。
うさぎとかめ
ヴォーリズ建築はモノクロがよく似合う。
長い廊下も魅力的だ。
酬徳記念館の階段はこんな感じ。こっちはまるくない。
講堂の二階からはこんな感じ。
こんな校舎で学べた生徒はとても幸せだったに違いない。
次は旧八幡郵便局へ。
これについては明日書きます。
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豊郷小学校旧校舎群、ヴォーリズさんの設計室
豊郷小学校旧校舎群、と旧八幡郵便局で開催されているヴォーリズさんの設計室展にゆく。
が、金環日食の話を先にアップしたいので、この日の話題は22日に書きます。
申し訳ありません。
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正岡子規『なじみ集』
たまには俳諧ネタ。
平成21年に世に出た正岡子規の『なじみ集』の翻刻版を入手した。
松山市立子規記念博物館から、翻刻版と複製版が発売されている。
この本が世に出たときの入札会の下見に私も行った。しかし長時間ずっと熱心に見ておられる方がおられ、新幹線の時間もあり、見るのをあきらめて帰った。
翻刻版とはいえ、ようやく中身が見られるのは嬉しい限りである。
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今まで習ってきたことが否定されてしまう…
中森康之研究室の輪講でジェイコブズの『アメリカの大都市の生と死』(山形浩生訳 鹿島出版会 2010年4月)を読み始めた。今日は第1章まで。めちゃくちゃ面白い。その面白さについてはまた改めて書くとして、今日、ある学生がこう言った。
ここに書かれていることを認めたら、私たちがこれまで習ってきたことが否定されてしまう。
学生諸君、そういう本を学生時代にどんどん読んで下さいな。自分がこれまで習ってきたこと、正しいと信じてきたこと、自分自身の根源が揺さぶられるような本を。そしてそこで真剣に深く潜って考えて下さいな。
ジェイコブズもこう述べている。
都市計画者、都市設計の建築家たち、そしてかれらとともにその信念実現を導いてきた人たちは、……都市はどういう仕組みであるべきかとか、そこの人々や事業にとって何がよいはずかについて現代の正統派都市計画の聖賢たちが何を語っているか、ずいぶん苦労して学んでいるのです。ただそれをあまりに熱心にやるので、それに反する現実が割り込んできて、苦労して勝ち取った学習内容を脅かそうとすると、かれらはどうしても現実のほうを脇に押しやってしまうのです。(024)
頭で勉強したことと現実がずれている場合、「現実のほうを脇に押しやって」しまわない勇気を持とうではないですか。
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中森研究室初新勧コンパ
7日夜。
中森研究室の初めての新勧コンパ。
再編によって建築・都市システム学系の兼務となり、今年度学生が来ることになった。そこで新勧コンパである。
乾杯~
ここの桃ジュースは最高です
何やら語ってますね。
3人とも期待してますよ~
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