中森康之ブログ
昨日の授業
- 2009-04-23 (木)
- 授業
昨日は4コマ連続授業の水曜日。
どの授業も明るくノリがいい。
1時間めは、文学的感性をちょこっと磨いてもらう授業であるが、例年のごとく、慣れていない学生が多い。特に「静かに自分と対話する」ということが苦手な学生が多いようだ。今年はノリがいい分、その傾向が強いのかもしれない。ゆっくり、じっくり、微妙な自分の中のざわめきを捉える喜びを味わって欲しい。その説明をした後は、ちょっとそういう空気になったので、次回以降、慣れてくるだろう、と期待している。次回にうまく流れを作りたい。
2、3時間めは、どちらもクラスコミュニケーション。次回からは学生によるプレゼンとディスカッションが始まる。こっちも期待大である。
4時間めは武道のお話。イントロダクションとして、武道の本質説明をイチロー選手の言葉を使ってちょこっとだけやった。その後、今日のメインテーマである「武士道の歴史」と「武道OS論」。まあまあうまく話せたと思う。感想も面白いものが多かった。
「武道OS論」は、昔、橋爪大三郎さんが宗教をOSに喩えて説明されていた(「春秋」1998年)のを読んで以来、「なるほど」と思い、武道に応用して展開しているものである。橋爪さんは「理工系の学生諸君には、これがわかりやすいらしい」と書いておられたが、「武道OS論」もやはり工学部の学生に分かりやすいようだ。もちろん、比喩を借りただけで、武道=宗教論ではない。
次回も頑張ってパワポ作りま~す。
宇津木妙子『宇津木魂 女子ソフトはなぜ金メダルが獲れたのか』
- 2009-04-22 (水)
- 読書
発売元: 文藝春秋
価格: ¥ 777
発売日: 2008/10/16
読んでいてとても嬉しくなった。宇津木さんのような指導者がいる限り、そしてそれを信頼する若者がいる限り、未来は明るい。
一本筋の通った人間の、強さと温かさがよく伝わってくる本である。指導者としても、修行者としても、とても参考になる。
上野選手争奪戦における行動、選手の叱り方、代表監督を引き受ける時の条件など、全てにおいて筋の通し方が見事である。
「私は妥協しないよ。監督に服従できない者は去ってもらう」と「監督宣言」しました。(61)
「おい、伊藤。ふざけるなッ。私がどういう監督か知っているよね」(47)
容赦なくやりました(62)
私は、こういう態度は絶対に許しません。(79)
厳し。
私は毎日選手にいろいろな話をしますが、ときには私の話が前日とは正反対に聞こえることもあると思います。(略)
また、ある時は練習前のストレッチをしながら、選手同士でおしゃべりをしていました。
「これから練習を始めようという時に、何をやってるんだっ、一日中、準備運動してろ!」
ろ本当に準備運動をさせました。
後になって聞くと、彼女たちにも言い分はあります。その選手たちは練習内容について話をしていたのだと言うのです。彼女らにしてみたら、まったく理不尽に怒る監督です。
しかし、そんな話には聞く耳を持ちません。私は「練習が始まったら一瞬たりとも気を抜くな」と言っているのです。勝つためには、「練習は試合と同じように、試合は練習と同じように」やらなければなりません。そのために全体で行う練習時間を短くしているのです。私に言わせれば監督に疑われるような態度を取った、それだけで自覚が足りません。
監督は選手に、「昨日はこう言ったけどね」とか、「君たちの言い分もよくわかるけど」などといちいち説明する必要はありません。物事はすべて、一言でいい表せるほど単純ではないのですから、監督が日々矛盾に満ちたことを言うのはむしろ当然です。(170)
しかし、この厳しさは、非常に繊細な神経に裏打ちされている。「人間」というものをほんとうによく知っておられる。そしてチーム作りや目標達成指導の技術もプロフェッショナルだ。そのことが本書を読むとよく分かる。
監督として、自分の人間としての限界にまでチャレンジし、人間として真正面から選手と向き合う。繊細、かつ温かく、そして厳しく。そしてプロフェッショナルな指導技術。どこにも妥協はない。
そんな宇津木さんのような指導者に出会った選手は本当に幸せだろう、と思う。
履修ガイダンス
- 2009-04-09 (木)
- 日記
今日は1年と3年の履修ガイダンス。3年生もほとんど(300余人)は編入生、つまりは新入生である。私は人文系科目についての説明担当である。
この前の披露宴のスピーチで、聴衆の意識をこっちに向ける極意を会得したので、今回もそれを使用。「おはようございます!」のひとことで、みんなの気を集めることに成功した。その後は、持ち時間の5分間、ただただ熱く語ってきた。
聴衆とは一体になれたが、説明担当の先生の中では確実に浮いていた……、かもしれない。
ともかく、新入生のみなさん、夢のあるすばらしい技術者になって下さいね!
バーゼルからの便り
- 2009-04-07 (火)
- 武道部
スイスのバーゼル大学に赴任した荒川夫妻から、インターネットができる環境になったとのことで、メールがきた。2人とも元気で奮闘しているようです。
なれない言葉、土地、文化でいろいろ苦労も多いようですが、2人とも武道の心で、それに余裕をもって対応できているように見うけられました。この調子で頑張ってほしいと思います。
武道の心は、こだわらない心です。苦即楽。楽即苦。同じものでも、見方によっても、見る人の心によっても、見え方は変わります。こっちが変わらなくても、向こうが変わる。臨機応変というのは、その時その場の状況を、よりよい方向にもってゆくための心法だと思います。
あの2人なら何の心配もないでしょう。武道部が自信をもって送り出した武道修行者ですから。
田坂英俊編著『備後俳諧資料集』第十二集
- 2009-04-06 (月)
- 研究
田坂英俊編著『備後俳諧資料集』第十二集をご恵与頂いた。
第十二集は、『木海発句集』の翻刻、小森可卜の新資料の翻刻を主眼としたものであるが(まえがき)、それ以外にも、尾道の俳人茂兮の俗称等が明らかにされたり、田能村竹田との交流を伝える新資料が掲載されているなど、とても興味深い。
私個人の興味から言えば、さらに、亀台写「俳諧三病之事」、麦二の「梅室入門証」などがとても興味深かった。
田坂さんや、福井の齋藤耕子さんなど、長年に亘って地方俳諧の資料を丹念に発掘、紹介して下さる研究者は、俳諧研究においてとても貴重な存在であると思う。私などは、ただただその御学恩を蒙るのみである。
残念なのは、こういう貴重な資料集は、そのほとんどが、私家版かそれに近い形で出版されることである。仕方ないとはいえ、勿体ないなあ、と思う。
熊野古道と国道
- 2009-04-02 (木)
- 日記
授業をとっていた学生(院生)が、春休み旅行の報告に研究室にやってきた(ちなみに武道部員ではない)。彼は春休みの前に、
歩いて旅したい。期間は2週間、テーマは「日本を知る」です。どこかいいところはありませんか?
と相談に来たので、伊勢神宮から熊野古道、花窟神社、熊野速玉大社、神倉大社、熊野本宮神社、潮岬の灯台などを紹介した。
その報告である。
「ご飯食べて行き」と声をかけて食べさせてくれた方、テントを張る場所がなくて困っていると、「今日はうちに泊まっていき」といって泊めてくれた方、その他毎日のように、いろいろな人と出会った。たまたまレストランから出てきた新聞記者に取材もされた。その他多くの人と出会った。それがとてもよかったと、写真を見せながら楽しそうに語ってくれた。
その他、いろいろ話してくれたが、その中で面白かったのが、
熊野古道は予想外に歩きやすかった。むしろ国道の方がずっと歩きにくかった。
ということである。精神的なストレス、疲れ方、足の疲労など、全てが熊野古道と国道では全く違った、というのである。彼の分析によると、熊野古道は歩くための道であり、歩くための工夫が随所に凝らされている。それに対し国道は、車のための道である。そのことがとてもよく実感できた、ということである。
実際に歩く前は、平らな国道の方が、熊野古道よりもずっと歩きやすいと思っていた。実際は逆だった。大きい市も同じで、やはり大きい街は車のために作られているのだ。これは実際に歩いてみないと分からなかった。とてもいい経験だった。
なるほど。彼は、ほんとうにいい経験をしてきた、と思う。技術者としても、人間としても、この経験は彼の大きな財産になるに違いない。そして何より、彼は自分では気づいていないが、今回の旅で大きな力を貰ってきたことが私にはよく分かった(ぴりぴり感じましたよ)。自然(森林)についての私の考えも少し話し、楽しく時間を過ごした。
ここ2年ほど熊野に行ってないので、行きたいと思っていたが、ますます行きたくなった。
初出勤
- 2009-04-01 (水)
- 日記
今日から大学は新学期。といっても、新入生もまだいないし、当然授業もまだ始まっていないので、閑散としている。
武道部の卒業生から、初出勤の報告メールが来た。研究室の指導教官でもない、課外活動の顧問が、初出勤の報告メールを貰えるのは、とても嬉しいことである。
メールには、武道部でやってきたことの価値を再認識しながら一日会社で過ごした、というような感想なども添えられていて、これまたとても嬉しく思った。
これからどんどん活躍してほしい、と心から願う。
野村克也『ああ、監督-名将、奇将、珍将』
- 2009-03-30 (月)
- 読書
発売元: 角川グループパブリッシング
価格: ¥ 740
発売日: 2009/02/10
私が野村監督の本を読むのは、野球の「思想」を語ってくれるからである。「武道の思想」を考えている私としては、とても参考になる。「武道の思想」は、優れたアスリートやビジネスマンたちの考え方と、多くの共通点を持っていると私は考えているが、中でも「日本野球」は非常に「武道的」である(もちろん今回のWBCチームが「サムライジャパン」と呼ばれていることとは全く関係がない)。そのことを確認させてくれるのが、野村監督であり、落合博満監督監督であり、野茂英雄さん、イチロー選手なのである。
本書も、「人間的成長なくして技術的成長なし」など、これまで何度も読んできたことが書かれてあり、基本的には「確かめ読書」であったが、今回興味深かったのは次の文章である。
なぜ確固たる理論と知識を持った監督がいなくなったのか。その理由は、昔に較べていまの監督の野球に対する取り組みが、現役のころから甘いことに起因しているように思う。研究心や向上心に貪欲さが感じられないのである。
長嶋のような天才以外、プロに入ってくるような選手の素質は大差ないと私は思っている。ということは、持てる素質を開花させ、かつそこにプラスαを加えられるかどうかが、プロとして生きていく条件となるわけだ。
現役のころから私は、数々の選手を見てきたが、よくこう思ったものだ。
「素質を見込まれてプロに入ったのに、どうして努力しないのだろう」(116頁)
私も、学生の「持てる素質」をいかに開花させるかということに奮闘しているが、自分が潜在的に持っている素質(可能性)を鍛え、具現化させようとする意識の希薄化は、最近の傾向だと思っていた。ところが野村監督が現役のころからそういう選手がたくさんいたと言うのである。まあ言われてみれば当たり前のことかもしれない。むしろ優れた素質のある選手に限って言えば、昔の方が才能だけでやっていたのかも知れない。
武道の思想の一つは、この自分の「持てる素質」をいかに発揮するかに関わっている。優れているかどうかは関係ない。人それぞれが持っている「自分の素質」を、最大限に発揮するための思想と技術が、武道にはある。嘉納治五郎の「心身最有効使用道」という武道の定義を私は基本的に支持している。
その意味でも、「持てる素質を開花させ」ようとする意識と努力を、一つの「技術」として語ってくれる野村監督の本は興味深いのである。
高専連携プロジェクト全体会議
- 2009-03-26 (木)
- 研究
豊橋技科大高専連携教育研究プロジェクト「技術者教育としての課外活動の可能性の提示と教育メソッドの開発」の第2回全体会議を行った。今回はメンバー以外に、2名の高専の先生が参加して下さった。
各メンバーの報告をもとに、ディスカッション。新しい発見があったり、自分の活動の意味を再認識したりで、有意義な議論が展開された。あまりに白熱し、予定時間を1時間半以上もオーバーしてしまったほどである。
山田先生の「私は元気だ!」論も刺激的だったし、江本先生が報告してくれた、部活顧問へのヒアリング調査では、自分との類似点と相違点が浮き彫りにされて、とても興味深かった。江本先生の言うように、「経験」のある先生が当たり前のようにやっていることを別の者が意味づけたり、メソッド化して取り出すことには、大きな意味があると思う。
今回の議論で、学生への接し方、指導(指示)のタイミングと方法なども非常に参考になったが、もう一つ気づいたのは、考え方(発想)の違いである。三崎先生は私に比べて、極めて楽観的である。楽観的という意味は、現状を肯定し、それをさらに良い方向に進めようという意志が強いということである。私は欲深すぎるのかも知れないが、ついつい現状に否定的になり、「もっと、もっと」と求めてしまう。それが学生を悪い方向へ導くことのないように、注意しなければならないと、思った。
やはり課外活動という実践の場は、「人間力」(社会人基礎力といってもいい)養成の場として、とても有効だと思う。ついでに言うと、指導者の「人間力」(指導力)養成にとっても非常に有効である。そのノウハウを指導者個人の経験だけにとどめるのは、勿体な過ぎる。ご本人がその実践の意味に気づいておられないことも多い。可能な限り個々の試みを共有財産にしたい。プロジェクトメンバー以外にも、多くの方に参加していただけると嬉しい。
その後、こんぴらさんへ参拝。「こんぴらさん-海の聖域 パリ凱旋帰国展~応挙、帰る~」を見て、私も帰る。
詫間電波高専現代GPシンポジウム
- 2009-03-25 (水)
- 研究
詫間電波高専の現代GPシンポジウムにご招待いただいた。
「ものづくり」による地域連携プログラム-学生・教職員・地域一体となった理科離れ対策・地域活性化・高齢者対策-
最終報告「ものづくり」による地域連携からネオクラスター創出 新たな取り組みへ
内容の濃い発表が目白押しで、とても勉強になった。責任者の三崎先生は、周りを巻き込むパワーと、チャレンジを継続・展開させる見通しを持っておられる。発想も実にユニークである。濃い仲間と、趣味的に、思いつきや気分次第でやりたがる性癖のある私には、とても刺激的だった。
三崎先生はよく「それをやること自体が面白くなければ続かない」とおっしゃるが、これこそ「遊び」の本質そのものである。つまり三崎先生が一番遊んでおられるのだ。
もちろんみんなで楽しく遊ぶためには、それ相応の苦労が必要である。誰よりも楽しんでいる三崎先生は、誰よりも苦労をしておられることもよく分かった。が、たぶんご本人にとっては「普通」のことなのだろう。
今回のシンポジウムには「夢」があったと思う。これまでの取り組みも刮目に値するが、これが今後継続・発展してゆけば、一体どうなるのだろう、ぜひ見たい、そう思わせるものだった。だから参加していてとても元気になったのである。この試みが続く限り、今後さらに詫間電波高専から、優秀なだけでなく「魅力的な」人材が輩出されるだろう。豊橋技科大にも是非来て下さいね。
学生さんが焼いてくれたクッキーとパウンドケーキもとても美味しかった。
お茶サービスロボのお二人と記念写真をとる。みっちゃん・とよさん、どうもありがとう。
その後の情報交換会で、豊橋技科大出身の滝くんに会う。滝くんは私が技科大に赴任した年に、サークルリーダーズ研修会で仲良くなった学生で、ガンダムの本を借りた仲である。今、八代高専に務めているという。何だ岩崎くんの同僚だったのか。しかも知里さんの研究室の先輩だという。何だ、何だ、そういうことだったのか。
懐かしく話しているうちにお開きの時間になった。
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